大人になっても。
子供の頃に夢見る科学や未来、世界や宇宙。
そういう夢では無くなってしまっても
男はいつも何かを空想する。
愛しているんだ。
シートにまたがって
一回だけふかした。
ドルドルンと響く。
止まっていると、
太陽が無くても暑い。
357に乗って走った。
滑るように走って行く。
トンネルを抜け、台場を超えて行く。
空いてる。
気持ち良くて笑う。
「バーーーカ!」
大声で叫ぶ。
全部風が持って行く。
凄いスピードで後方へ置いて行く。
何もかも。
楽しくて楽しくて笑う。
15号線から海岸へ向かう道に降りて行く。
もうすぐだ。
埋め立てられた土地に並ぶ
美しいマンション街が見えて来る。
ジョギングしたり犬の散歩をしている人達が
ポツポツと見えて来る。
大好きな場所に着いた。
まだ誰もいない。
海岸をカモメが数羽歩いている。
日の出には間に合わなかった。
新しい太陽がすでに強烈な熱を開放している。
潮でカッサカサの販売機からコーラを落とす。
ガコン。
最高の音と一緒に落ちて来る。
ーーやっぱ、コーラは缶だよな。
冷たい。
くわえタバコでプルトップをひいて
短い短い旅は終わった。
浜辺に座ってぼんやりしていると
彼女がやってきた。
隣に座り微笑んでいる。
真っ黒だった波に、色がついてくる。
ーー触ってみようぜ。
生温い感触をつかんで、逃げる。
何度か繰り返していると
浜にもランナー達が現れる。
振り返ると彼女は消えていた。
ーーフフフ。
さあ、帰るか。
男は空想する生き物だ。
そいつは時々
女神を連れて来る。